思いつくままに

思いついたことをただただ書くこととします

人造人間

君は私のことを忘れるだろう


今日忘れなくても明日には
明日忘れなくても来週には
来週忘れなくても来月には
来月忘れなくても来年には


そしていつか必ず 忘れるだろう
そうしてくれれば 私は綺麗さっぱり消えることができる


でも


いずれ思い出してしまうかもしれない


あの小高い丘の公園の あの美しいソメイヨシノを見たときに
あの寂れた物悲しい裏通りの あの悲しく輝くランプの喫茶店を見たときに
あの子供たちが歩いて帰る河川敷の あの紅く滲む雄大な夕日を見たときに
あの交差点を見たときに


実に悲しいことだ


そうして再び生み出された私は
思い出でツギハギだらけの無様な私となるのだろう


都合のいいように改造された
操り人形となるのだろう


無責任に思い出してくれるな
それはもはや 私ではない
君の一部となり果てた
悲しい私でしかないんだよ

茜空

朝焼けは 人のいない を楽しむ


まだ乱されていない澄んだ空気を思いっきり吸い込んで
深く深くその静けさを楽しむ


夕焼けは 人のいる を楽しむ


今日一日のそれぞれの人の人生が 会話の節々から香り出し
一つひとつに耳を傾けると なんだか微笑みたくなるときもある


今日は綺麗な茜空
私はあの時代に戻りたい

別れ

『明日の朝には出発するから
もうここに戻ることはないから』


そう言って何人も何人もこの場所から旅立って行った


あなたたちを上から眺めていた私は
今日からあなたたちに見下ろされる存在になった


いくつもの別れを経て
私の上にはあまりにも多くの人たちが蔓延るようになった


湧き上がるどす黒い感情を抑えて
それは私の精神に反することだと言い聞かせて
私は笑顔に徹する


あぁ 私は強者でありながら弱者になろうとしている
迫りくる世代の波を担ぎ上げ 自らその波に溺れようとしている


真実を悟ったあの晩
私は私に別れを告げたのかもしれない